御山登拝

題字は、伏見稲荷大社奥社で賜つた御朱印の印影から採りました。では、をととひの続きです。
奥社を出て、お山へ向ふ処にも多くの赤鳥居が並んでゐた。皆、信者の寄進らしい。もう赤鳥居の隧道と化してゐる。外の様子が見え辛くなつてゐた。其れでも連れは注意深く隧道の外の自然を探し求めてゐたやうだつた。丁字路を右に折れて暫くの処だつたらうか。連れが何かを見附けたらしい。見ると何かの生物が自然と植わつてゐた。其の怪しげな生物に対して、連れに「採つて帰るか」と訊くと、「嫌あ」とか言はれてしまつた。一寸歩くと、右手に「お塚」の密集した様が見えてきた。塚の密集した部分を分け入るやうにして這入つて行く。又、怪しい生物が植わつてゐた。怪しい匂ひを放つ其れはあまり永くゐると、ヤバイ酔ひを催しさうなので、早々に退去する。登り切つた処にはお不動さんが立つてゐた。名附けて「難切り不動」お参りする人が後を絶たない。線香の烟も後を絶たない。其の直ぐ脇には「新池」と呼ばれる池が在る。池には鯉と水鳥と亀のやうな生物がゐた。連れは夢中になつて池を眺めてゐたが、一寸残念な事に、池の水があまり綺麗ではなかつた。傍に在る茶屋でお不動さんの事を訊いてもあまり要領を得なかつたが、私も線香を買つてお不動さんにお参りをした。茶屋の真ん前に在つた『熊鷹社』は、勝負事の願ひを叶へて呉れるらしい。必死にお祈りしてみた。
又、先へと歩いて行く。三ツ辻を右に折れて、四ツ辻に出る途中、見晴しのいい場所が在つて、連れと二人で暫く拡がる光景を眺めてゐた。一寸登ると其処は四ツ辻だつた。茶屋で飲み物を求めて少し休みを取つた。其の后、先づは左に曲つて、『田中社』へ登る。田中社は大きな石を祀つてあつた。其の周りには小さなお塚が密集してゐる。凄い光景だつた。四ツ辻に戻つて、お山の外周路を時計回りに歩き出す。此処にも赤鳥居の隧道が在つた。暫く進むと、『眼力社』の手水場のお稲荷さんに目を瞠つてしまつた。今にも飛掛つて来さうな格好をした狐の口から水が出て来る。いい感じだつた。其の一寸先には『御膳谷奉拝所』が在る。昔飯炊き場が在つたらしい事が看板に書かれてあつた。此処にも小さなお塚が密集してゐた。お塚を見て廻る。色々なお塚が在る中に、特に気に掛つたのは、狐以外の動物の像が立つた中規模のお塚と、蔵鉤を咥へたお稲荷さんの像が向つて左に立つた中規模のお塚だらうか。大切にされてゐる様子が窺へる。又、奥のはうには、某企業が立てたと思しきお塚も見られた。一通りお塚を見廻つて、外周路に戻ると、連れが「滝を見たい」と言ふので、一寸外周路から外れる事にした。
今回は此処迄。