石切さんにて

参道を左に折れて直ぐの二の鳥居を潜ると、早速「お百度参り」をしてゐる人達が出迎へて呉れた。グルグル、グルグルと時計回りに多くの人達がいつ止むとも判らないお百度を境内に設置された二つのお百度石を囲むやうにして廻つてゐる。皆様々な願掛けの為に必死なんだらうと思ふ。
其の奥のはうに本殿が在る。昭和一桁生れのロンパッた目附きの狛犬が社を守つてゐた。連れは暫く狛犬に見惚れてゐたやうだつた。
お参りを終へて暫く境内を散策。本殿の左手前には何かの祈祷をする為の囲ひが在つて其処には何故かお釜が数個真直ぐに並んでゐた。其の先には一寸広い空間が有り、其の左手にドーム状になつた何かの施設が在り結界のやうに守られてゐる。広い領域の右奥には小さい建物が在り其の建物に「御神馬」との札が掲げて在る。連れは中が気になるらしく、「中が見えない」とか言つてゐたが、私にも中の様子は判然としなかつた。
「御神馬」の建物を左手に右に折れると其の先に休憩所が在つた。中には祈祷の申込書を書く臺とか、ジュースの自販機などが在り、其の自販機の上には立派な飛行機の羽根が飾つてあつた。暫く其の羽根を眺め乍ら休んでゐた。この休憩所は二階建てになつてゐて、真下は厠になつてゐる。
休憩所の隣の神楽殿と神輿殿の間の道を潜ると其の先に手水舎が在る。駐車場からの参拝者用なのだらうか。其の侭本殿の裏手に回ると、摂社の穂積神霊社が在り、此処で三つ在る石を撫でてみる。脇の小さな池に陶器の小亀を落して願掛けをするらしい。
グルッと廻つて本殿の前に戻つて、左手に在る「崇敬会館」で御朱印を賜る。会館の中には立派な神輿が飾られてゐた。今考へると、あの神輿が「上之社」迄行くとすれば、あの細い参道をどう移動するのか気になつて来る。連れが何やら御不満のやうだつた。「御朱印見せて」と訊くので、見せてやつたら、共に判子の陰影があまり芳しくない。此れぢや不満だよなあ。会館の奥に「御神馬」のゐる公園が在るらしいので、其処へ移動。けふはお馬さんがゐなかつた。残念。大きな燈篭の前で少し休憩して離れる。
境内の摂社を眺めつつ、鳥居を抜けた其の先に山門のやうな格好をした絵馬殿が在つた。絵馬殿に這入ると、中には由緒正しい立派な絵馬が数枚飾られてゐた。建物の前面に出ると、前面に向つて左右に「誰か」を形作つたと思しき像が二体飾られてゐた。左側の所に其の像の説明書の看板が在つたが、何とも要領を得ない内容だつた。恐らく御神像なのだらうと思ふのだが、其れを明かすやうな説明は書けないんだらうと思ふ。因みに、絵馬殿向つて右側の剣を手にして右手で指差してゐる像が「饒速日尊」で、向つて左側の弓矢を番へてゐる像が「可美真手命」なのだと私は解釈してみた。
で、其の先には白い大きな一の鳥居がドンと構へてゐた。全体的に立派な神社だつたと思ふ。元来た道を戻つて、二の鳥居の手前に十字を切る形で存在する参道商店街を右に曲り、「上之社」へ向つて坂を登る事にした。