「上之社」への道

一路「上之社」へ向ふ事になつた。参道商店街は細い登り坂になつてゐて、新石切駅から来た参道より増して怪しさを醸し出してゐる。鰻丼が出る食堂やら、雑貨店やら、食料品店やら、占の館やら、兎に角色々と怪しい。連れは食料品の店で何やら買ひ物をしてゐた、「柚子の這入つた七味だつて」。私は適当な土産物屋に這入つてベーゴマモドキの喧嘩独楽を入手、「関西の独楽はこんな感じなんだな」とか思ふ。暫く上ると左手にベンチが在つたので一休み。連れも疲れてゐたらしい。
適当に休んで、又登つて行く。暫く行くと右手に何かの施設が見えて来た。何処かのヲバサンが先回りして、飾りの岩を小槌でコンコンコンと叩き、続いて右隣に在るひよろ長い耳をした誰かの顔の銅像に水をバシャバシャと引掛けてゐた。其の後には四角く切つた領域が窪んでゐて、下は池になつてゐるやうだつた。其の低くなつた壁面には三面に「耳なり」とか大きく書かれてゐる。脇には藤棚とも思はれない何かの植物が生つてゐる。連れは「怖い、怖い」を連発してゐたので、直ぐ先の大通りを渡つてしまつた。
渡つた先の鳥居を越えた右手には「日本で三番目」の大仏様が建つてゐた。其の斜向ひには「献牛舎」と呼ばれる倉庫が在り、硝子張りになつた中には赤、青、黄色、緑など、様々な色をした牛の首の像が臺車に乗せてあつた。祭りの時にこの牛車を引き摺り回して練歩くのだらうと思ふ。面白さうな祭りだな。一寸坂を登ると、線路のガードが見えて来た。ガードを潜つて、其の先を直ぐに右に曲つてしまつた。線路伝ひに行くと左手には墓地が、「方向が違ふんぢやないの、戻らう」と連れが言ふので、ガードの手前に戻つて、簡単な地図を片手に検討。民家の佇む道を更に登つて行くと、「上之社」へ続くと思しき石段が見えて来た。後もう一寸だ。