新書捕獲

『日本の誕生』は、偶々目に附いた日本創生の頃の歴史を記述した新書だつたので入手した。『シナ思想と日本』は、戦前(1938年)に津田左右吉が書いた本だが、随所に日本語の文字使に対する批判を加へてゐる。参考迄に、まへがきから其の部分を引用しておく。

原版の「まへがき」では、なほ、ニホン人は、ニホンのことばをよくするために、できるだけ早く、シナ文字をつかふことをやめてゆくようにしなくてはならぬこと、いはゆる漢文と結びついてゐる過去のシナふうの學問のしかたや事物の考へかたは、現代文化の基礎である現代の學問の精神および方法と一致しないものであるから、漢文は普通教育の教科から除かねばならぬこと、

云々と続けてゐる。「――やうに」とすべき部分が「現かな」風になつてゐる所を除けば、ほぼ正字正かなの文章で綴られてゐる。然し乍ら、其の内容は本文を含め「日本語におけるシナ文字の排除」を殊更に強く主張するものとなつてゐる。流石は表音主義者である。
だが然し、「シナ文字」や漢文教育の排除が、「ニホンのことば」をよくする為にどれ程の効果が期待されるのか私には疑問である。