読み仮名と誤読の狭間

id:tirukuru:20030818さんが誤読について書かれてゐます。誤読かどうかも判断し辛い語句を示してみませう。

記す
しる-す・き-す
著す
あらは-す・ちよ-す
経緯
いきさつ・けいゐ
自然
しぜん・じねん

一寸思ひ附いたものだけ一覧にしてみました。「記す」と「著す」は共にサ行四段活用の動詞です。和語でも漢語+サ行動詞でも同じ活用をしますが、どちらの読みでも同じ意味です。次に和語と漢語の違ひで、名詞の形をしてゐるものが「経緯」です。この場合、読みに依つては意味に若干の違ひが生じます。
「自然」の場合は、漢音と呉音の違ひになります。一般的には漢音の「しぜん」を使ひますが、仏教の経典で読む場合は必ず「じねん」となります。「競売」(けいばい・きやうばい)の逆の現象と受取つて貰へればいいでせう。外にも「せりうり」と云ふ言ひ方もあります。
【著】の字が出てきましたので、少しこの漢字についても書記しておきませう。【著】の字は正字ですが、この異体字に【着】が在ります。現在の「常用漢字」では、其の読みも意味も別けられて別物のやうにされてしまつてゐますが、元々全く同じ漢字だつたのです。チャクもチョも同じ漢音ですが、字音の違ひで意味の違ひを表してをり、文字だけでは一寸判断し辛い部分があります。私の場合は、敢へて意味を明確にさせる意味合で、チョの字音字義を用ゐる場合は【著】、チャクの字音字義を用ゐる場合は【着】と、書分けるやうにしてゐます。ですが、周りの正字正かなを使つてゐる人達は【著】のみを使用してゐるやうです。